ブルガリア北部に位置するヴェリコ・タルノヴォ(Veliko Tarnovo)。
断崖に沿って家々が立ち並ぶ独特の景観と、中世ブルガリア王国の首都としての歴史で知られる町です。
多くのツアーではツァレヴェツの丘や職人街・サモヴォドスカタ・チャルシャを中心とした半日観光で終わることが多いですが、今回はあえて時間をかけ、温泉地ヒサーリャやワインの産地メルニックとはまた違う、ブルガリアの歴史をより深く感じられる場所を巡りました。
バルカンの要衝として栄えた古都
ヤントラ川が蛇行する渓谷に築かれたヴェリコ・タルノヴォは、防御に優れた立地から中世には第二次ブルガリア帝国の首都として繁栄しました。
現在も町のあちこちに歴史の痕跡が残り、歩くだけで「歴史の層」を感じられるのがこの町の魅力です。
プレオブラジェニエ「主の変容」修道院
市内中心部から少し離れた場所にあるのが、プレオブラジェニエ修道院(主の変容修道院)。
ヤントラ川沿いの断崖に建つ静かな修道院で、観光客も少なく、落ち着いた雰囲気に包まれています。
内部には19世紀ブルガリア復興期を代表するフレスコ画が残されており、色彩の豊かさと表情の力強さが印象的。外壁にも人生の輪などのフレスコ画が残り見ごたえがあり。
自然と歴史、信仰が溶け合う空間で、ヴェリコ・タルノヴォのもう一つの顔を知ることができました。

歴史博物館で学ぶ「ブルガリア憲法」の誕生
今回特に印象深かったのが、歴史博物館(Museum of the Revival and Constituent Assembly)。
ここは1879年、ブルガリア最初の憲法が採択された憲法制定議会の建物として知られています。
展示では、オスマン帝国支配からの解放後、国としての形を模索していた当時の人々の思いや議論の様子を知ることができます。
近代国家ブルガリアが誕生した「現場」に立つことで、歴史がぐっと身近に感じられました。

露土戦争とシプカ峠の戦いを知る
ブルガリアの近代史を語る上で欠かせないのが、1877〜78年の露土戦争。
この戦争の中でも、現在も国民的記憶として語り継がれているのがシプカ峠の戦いです。
オスマン帝国からの解放を目指し、ロシア軍とブルガリア義勇兵が命を懸けて戦ったこの戦いは、ブルガリア独立への大きな転機となりました。
歴史博物館やヴェリコ・タルノヴォ周辺には、こうした激動の時代を背景とした史跡や資料が多く残っています。
歴史を知るほど、旅は面白くなる
ヴェリコ・タルノヴォは、ただ美しい景観を眺めるだけの町ではありません。
修道院、戦争の記憶、憲法制定という近代史の節目——それらを知ることで、この町の重みと魅力がより深く伝わってきます。
半日観光では見えてこないブルガリアの歴史と精神に触れられる、そんな旅先。
歴史好きの方はもちろん、「少し知的な旅」を楽しみたい方にもおすすめしたい町です。