2017年10月の6日間、北コーカサス地方の各地(北オセチア、イングーシ、チェチェン、ダゲスタン)をみてきました!
バムト
マガス or ナズラン-グロズヌイ間は、幹線道でもいけますが、山道を通って行ってみました。ここ以外でもチェックポイントで止まる事は何度かありましたが、パスポートを見せるだけで全て問題なく通過することが出来ました。余談ですが、イングーシとチェチェンの警察官の違いはヒゲの有無だそう。
チェチェン戦争で破壊された街バムトは廃墟が建ち並ぶ村で、破壊のひどさを垣間見ました。アチホイマルタンでランチ休憩とモスクに立ち寄りますが、アジア人がよほどものめずらしくて興味津々だったのでしょう。子供たちの視線の的でした。チェチェン初代大統領ドゥダーエフの殺された村には、以前はモニュメントがありましたが、ロシアが撤去したそうです。
グロズヌイ
チェチェン共和国の首都で、メイン通りのプーチンアベニュー(以前はビクトリーアベニューだったそう)沿いに見所があります。立派なモスクは街のシンボルで、その奥のビル群はホテルやマンションです。ビル群の通りを挟んだ反対側にはカディロフ関連のモニュメントがあり、以前はその奥が官邸だったそう。町にはツーリストインフォメーションもあり、お土産や地図も買えます。
街は新しい建物ばかりで、逆にそれが破壊され尽くしたことの証でもあるように感じました。とはいえ、滞在中特に危険を感じることもなく、快適なシティライフが送れました。
アルハン・カラ
この町を訪れた理由は、チェチェン紛争を生き抜いた医師ハッサン・バイエフの本「誓い」を読んでいたからです。彼が活動したという病院は今は2階建ての質素な建物で、ここでいろいろとやったのか…と思うと感慨深いものがありました。街の建物を見ていると新旧両方あり、破壊と再建の様子がグロズヌイより良く分かるようでした。
イトゥム・カレ
グロズヌイから川沿いを南下して約2時間、目指すはイトゥム・カレですが、途中、チェチェン野戦司令官アミール・ハッターブによるシャトイの待ち伏せの場所や、この渓谷で最も川幅の狭いといわれる景勝地などを通っていくので、北コーカサスの旅ではそんな道中の風景も楽しみの一つです。
イトゥム・カレにある博物館は、1Fには当地の歴史・民俗的な展示があり、2Fはアフマド・カディロフと彼の息子ラムザン・カディロフに加え、この地出身の英雄的軍人にささげるメモリアルになっていました。
町の少し先にある塔に登れたのは面白い体験でした。内部は5層くらいに分かれており、薄暗くて階段が急、ハトのフンがあるので、軍手やライトがあるとベターです。
ニハロイの滝
イトゥム・カレからグロズヌイ方面に約30分位戻ったところに、ニハロイの滝があります。滝は3段になっていて、一番奥の滝までは徒歩約20分。道のりは階段が多く滑りやすいところもあるので要注意ですが、なかなかキレイです。
パーキングからみて滝と反対の方角には、徒歩5分くらいのところに岩肌の砦があり、砦内にはしごがかかっていますが、中には特に何もないので、まあ行かなくても良いかなという印象です。
ここのレストランのシシャリクが安くて美味しくてボリュームもたっぷり。日本人なら2人で1本をシェア+サラダ+パンくらいで十分立派なランチになります。WCも珍しく洋式でそこそこキレイなので、ぜひここで小休止をお勧めです。コテージもあり宿泊も出来るそうです。
チェチェンのリゾート キュゼノイ・アム
チェチェンの観光案内に良く出ている湖で、湖畔に同名のリゾートホテルがあります。到着が夜遅かったのでアクティビティは出来なかったのですが、チェチェンの人たちは湖でのボート遊びや周辺ハイク、スノーボードなどを楽しむそうです。周辺には自然以外ないので、事前に飲み物やスナックなどを少し用意してから行くほうがベターです。
ホイの廃墟
キュゼノイ・アムのほど近くに、ホイという廃墟の村があります。中央アジアへの強制移住からの帰還が認められるも、山岳地方の村に戻ることは許されず、ロシアによって破壊された跡です。中に入れる建物もあり、周囲やの山々や下を流れる川の景観などもGoodです。
マカジョイ村 羊 天然ガスパイプライン
キュゼノイ・アムからダゲスタンへ向かう途中、ルートによってはマカジョイ村を通りましたが、あ~ここがたしかアンナ・ポリトコフスカヤの本だったかな?に出てきた最も見捨てられた村か~と思い出すと、感慨深いものがありました。ここからグロズヌイ、ひいてはウラジカフカスやモスクワまで子供の消息を求めて出て行くのがいかに大変なことか…!
はじめは珍しかった羊や牛など家畜の群れが、ごく普通にその辺の道路やその辺に放し飼いなのも今や見慣れたもので、ついには群れに囲まれてしまうシーンも…(笑)
天然ガスのパイプラインも同様ですが、街中にも普通にむき出しの状態であり、それをベンチ代わりにしているおじいちゃんがいたり、看板をぶら下げていたり…。この資源のおかげであれこれと問題も起きるのですから考えさせられるものがありました。
グニブ
19世紀前半のロシア帝国による北コーカサス支配への抵抗運動の英雄的指導者であるイマーム・シャミールゆかりの町で、岩山沿いに広がる町を登っていくと、岩肌にシャミールの壁画があり、さらに先の門をくぐると、1859年についに彼が降伏したとされる場所がありました。
山間部の雄大な眺めの街 チョフ
グニブから約45分でチョフの村着。ここも岩肌沿いに広がる町ですが、段々畑がきれいに見え、景観はグニブよりも良いイメージ。
村の中心の広間で写真を撮っていたら、奥へ奥へと促されて、地元の方のお宅へお邪魔することになり、紅茶とジャムやお菓子をご一緒させて頂きました。この時は、ご夫婦と1921年生まれのおばあちゃんがいらっしゃって、なんとか英語で意思の疎通が出来ました。夏にはオーストリア人も来たそうで、ホームステイも良さそうです。
マハチカラ
カスピ海沿いにちょっとした憩いの公園のようなところがあり、そこから徒歩で旧市街散策。車で登った丘の上の展望スポットからは町とカスピ海が見渡せます。
今回訪れた4共和国の首都の中では、このダゲスタンのマハチカラが最も大きな町とのことで、人も車も多かったです。また、他の地域より第2次大戦やチェチェン戦争での被害が少ない分、古めかしいところや旧ソ連的な雰囲気も多かったですが、カスピ海のおかげで開放的な雰囲気もあり、全体的に他の町とは異なる印象でした。
世界遺産デルベント
マハチカラから南へ約2時間、アゼルバイジャンまでも約1時間のところに、世界遺産の要塞都市デルベントがあります。紀元5・6世紀のササン朝ペルシャの頃からの歴史を持つこの町は、町とカスピ海を見渡す丘の上に城塞跡が残り、カスピ海に向かって平行に続く2つの城壁の間には、長い年月の間の様々な時代・民族・宗教の建造物を見ることができます。アルメニア正教会あり、モスクあり…身内との人質交換条件にも応じず町を守った女性他の墓地あり…。
城塞内は外壁に沿って歩けますが、内側には柵はないので、高所恐怖症の人には怖い場面も!?敷敷地内にはハマムや博物館など、所々入れる場所があり、当時の水道システムや首切り台、立ち牢なども見られます。
ホテルと食事
ホテルはどこも総じて衛生的で快適に過ごせました。バスタブがあるところもあり、お湯の出も悪くなかったです。wifiは無料で使えますが、使い勝手はまちまちで、部屋の位置によって速度が落ちたり、ロシア全般に言えることですが、LINEなど使えないものありました。
滞在登録はこちらからは何も言わなかったのですが、ホテル側でするところ・しないところがまちまちでした。ロシア出国時にとくにそれに関する質問はなかったです。
お食事は周辺のトルコ風、南コーカサス風、ペルシャ風のものから、伝統料理まで色々トライしてみました。中でも特筆すべきはチェチェン伝統のジジク・ガルナシ(zhizhig galnash)!肉(牛の臓器に詰め物をしたものの場合もあり)とニョッキのようなものを、にんにくたっぷりのスープにつけて食べますが、にんにくパワー超絶MAXです!
イングーシ伝統のパイは、薄いピザ生地の間に具を織り込んだ、ナンの様な感じでもあり、具はかぼちゃ、チーズ、ポテトなど様々なものがあるそうですが、私が最も好きだったのはかぼちゃでした。
ロシア版寿司のテイクアウトもしてみました。お寿司はとても人気なようで、中華料理店よりも寿司店の方が多く見られました。チーズ+サーモン+パプリカ巻きなど、日本人的な感覚では思いつかないようなメニューもあったのですが、結構美味しかったです。しかもちゃんとわさびとガリ、割り箸つき。ただ、オーダーしてからイチから作るので、結構時間はかかったのですが、1本199ルーブル(約400円)でこれなら全然アリだな~と。
まとめ(治安や注意事項)
北コーカサス・チェチェンというと、どうしてもまず先に浮かぶのは紛争のイメージだと思います。日本の外務省の安全情報でもレベル3が出ている地域ではあります。実は渡航前に別件で外務省の方とお会いし、彼らの安全レベルの考え方や、レベルが高い地域への旅行を実施するに当たり注意すべきことなどをお話させて頂く機会がありました。その視線も持って実際にこの地を訪問してみたのですが、現実的にはそこまでの不安を感じなかったのが本音です。逆に、徹底的に管理されているので、旅行者が遭遇するであろう日常的な犯罪で言えば、下手な西欧の大都市より安全じゃないかという側面もあるかもしれません。
注意すべきは何よりもまず、現地の人々・文化・伝統を尊重することです。郷に入っては郷に従えですね。モスクに入るときを考えると分かりやすいでしょう。女性はロング丈のスカート(ない場合は入口で巻きスカーフを貸してくれたりもします)着用+髪を覆う、女性のスペースは2Fなどのルールは旅行者にも適用されます。
現実的な問題としては、道中のWC状況や道が良くはないので、それなりに体調に気を配っていただくようになるかと思います。
なかなか日本では事前に観光情報を得ることの出来ない地域だけに、勉強・準備をしたつもりでも実際に行ってみて知ること・感じることはやはり何者にも代え難いし、景観の雄大さやその場の空気感、味などは行かなければ伝わらないところもたくさんあるということを、改めて実感しました。
今こうして振り返っても、とても濃厚な、印象深い6日間でした。